冷たくなった手をキュッと握り、優月は教室へ向かった。
これまでにない程の不安と恐怖を抱えて。
優月が教室に入ると、一斉に視線は彼女に向けられ、気味が悪いほどに静まり返った。
そしてしだいにどこからか、ひそひそ声が聞こえ始めた。
目を合わせずとも、言葉の端々から自分のことを話しているのは明確で、今まで感じたことのない視線は、優月に棘のように幾度となく刺さった。
里乃以外のクラスメイトと一度も話すことなく、この日の学校は終わった。
昨日までの学校生活が一変した、最低最悪な日。
そう絶望にかられた彼女に放課後、呼び止める人がただ一人いた。
クラス内の方か彼女の方か、どっちの空気を読んだのか、それとも読んだ訳ではない彼自身の天性か、長澤はいつもと変わらないスキップまじりで彼女に駆け寄った。