「っ……」


優月はすぐに答えられなかった。


でもかと言って、親友に嘘をつくなんてできるはずもなく、優月はバカ正直者だった。



「何か、隠してるんだね?言えないこと?」


「………」


「……そっか。分かった。私は、ただの噂だと思ってるよ。けど、クラスの他の子とかは、随分面白がってる。自分の口からちゃんと本当のこと言ったほうがいいよ。早めに」


極めて冷静なアドバイスを残し、里乃は先に教室に戻っていった。





その場から優月はしばらく動けなかった。


陸と瞬のことであらぬ噂をたてられている。

どの程度“面白がられている”のか分からないが、里乃から先に聞いておいたことで、多少の覚悟はできる。





前に長澤に腹黒の顔を知られ、クラスにばらされるなんて心配をしていたことがあったが、きっとこれはそんな次元の問題じゃないだろう。