(…でも、もしかしたら彼女の可能性だってある。…どうしよう。知るのが、すごく怖い)



校舎の中を走っていると、知らない学校だけあってか、気づけば完全に迷っていた。

文化祭のはずなのに、周りには誰一人もいない。


声も聞こえてこない。




走り疲れた優月は、乱れた息を落ち着かせながら、廊下にへたり込む。




白い靄が辺りを包み始め、もはや学校ではなくなる。



(嫌なことから逃れたくて、逃げてきたこの場所は、どこだろう…。ここはどこだったっけ?)




しだいに優月は意識が遠のいていった。









翌朝、頬に走る小さな痛みに気づいて目が覚める。


ゆっくり重い瞼を持ち上げると、真っ先に視界に飛び込んできたのは、うるむ大きな黒目で見つめる瞬だった。