容赦ないお気楽少女の里乃に、今日ばかりは命拾いしてもらったと思う程、心の底から里乃がいてくれてよかったと思った。
里乃の強引な腕の引っ張りも、今の彼女には感謝しかなかった。
その日の夕食は、陸自慢の料理の中でも、優月が特に大好きな親子丼だった。
絶妙な半熟加減のふわとろ卵。
優しくて温かい味は、心にまで染みていく。
おばあちゃん直伝だという親子丼。
陸が小学校中学年の頃にはもうマスターしていたらしい。
三つ葉を上に乗せることもかかさない。
両親を亡くして以後に食べた親子丼は、陸が作ったものだった。
母の味と変わらなくて、優月は随分驚いた。
初めて食べた時、「陸の親子丼、大好き」と、優月は無邪気な子供のようにもらしていた。