‘‘よかったじゃんっ!蒼くんと同じクラスで’’

美々ちゃんは小声で、あたしに耳うちする。あたしは笑顔でうなずいた。

でも、そう喜んでいられたのも、つかの間。

『んじゃ・・・俺、先行くわ』

蒼は、同じ中学だった男の子たちに見つけられて、強引に連れ去られた。

『うん、後でね』

あたしは笑顔で手を振る。
蒼は、男子たちにも人気者。

蒼は常に冷めた口調だし、いつも明るく周りに笑顔を振りまいているタイプでもない。

人からはクールな印象を持たれる。

だけど、昔からいつもみんなの中心にいる人だった。

『・・・綾音?何ボーッとしてんの?』

美々ちゃんがあたしの顔の前で手をパタパタと動かす。

あたしが見つめる視線の先。

蒼のそばに駆け寄り、何やら話しかけている知らない女の子たち。

『美々ちゃん、すでに蒼がモテてる。嫌だぁ〜』

あの女の子たち、蒼にきっと携帯の番号聞いてる。
絶対、赤外線通信しよーとか言ってるんだよ・・・
あぁー嫌だ。

何度も見てる光景でも、そのたびに泣きそうになる。

慣れっこなんて・・・ただの強がり。

そんなあたしを見かねて、美々ちゃんは、あたしの頬を左右に引っ張った。

・・・すごく、痛い。

『泣かないのっ!蒼くんがモテてるなんて、今始まったことじゃないでしょうがっ』