『嫌…っ』

こんな姿…蒼に見られたくない…

びしょ濡れの制服…
スカートの裾をギュッとつかんだ。

『おまえが開けないなら、俺がそっち行くからなっ』

『蒼…っ!やめて』

ガチャッ・・・キィィィッ・・・ーー。

あたしは自分で、個室のドアを開けた。

『綾音…っ!』

『…ぅぅ…っ…蒼…』

びしょ濡れのあたしを、蒼はぎゅうっと抱きしめてくれた。

蒼は、息を切らしてる。

そうまでして探してくれてありがとう。

幼い時からそうだった。
蒼はいつも、どんな時もあたしを助けてくれたね。

蒼に抱きかかえられて女子トイレから出ると、美々ちゃんが廊下の向こうから走ってきた。

『綾音っ!』

『美々ちゃん…』

声が震える。
蒼はそっとあたしの身体を下ろした。

『びしょ濡れじゃない…どうしてこんな…ひどいことに…。綾音…大丈夫だかんね?あたしらがちゃんとアンタを守るから…』

美々ちゃんも、びしょ濡れになったあたしを抱き締めてくれた。

『高橋…綾音のこと保健室に連れてってくれるか?』

『うん…もちろん…。蒼くんどこに…?』

蒼は、美々ちゃんの質問を無視して、自分のブレザーを脱ぎ、あたしの肩にかけて歩いていってしまった。