ケンが俺の背中を叩いた。

『蒼くんっ♪』

出た…!夏川栞…。

『蒼くん、一緒に帰ろ?』

夏川は、俺の左腕に腕をからめてくる。

『…何で俺が?』

『女の子ひとりじゃ…夜道危ないじゃない?怖いんだもん…』

俺の腕にからみつく夏川の腕を、俺は無理やりほどいた。

『だってさ!ケン。マネージャー送っていってやれよ。んじゃ、お疲れ〜』

夏川のことをケンに任せて、俺はダッシュでその場を離れた。


『ハァ…疲れた』

何だよ…夏川、マヂめんどくせぇ…。

ーー・・・ガチャ。

俺は家のドアを開けた。

『…ただいま』

俺がそうつぶやくと、大きな足音がバタバタと聞こえてきた。

『おかえりぃ♪』

綾音が、まるで主人の帰りを待っていた犬のように、飛びついてきた。

『…何だよ?いきなり飛びついてきて…』

『部活もどうだった?』

目をキラキラと輝かせて聞いてくる。

『んー…まぁまぁ…』

『蒼…何かすごく疲れてない?部活キツかったの?』