『フンッ…幼なじみっていうだけで、偉そぉに…』

栞ちゃんは、あたしのおでこを人さし指でグイッと押し、にらみつける。

『蒼くんが、アンタみたいな女を好きになるわけないでしょ?可愛くもない、普通で、バカみたい。幼なじみだから、そばにいれてるの、気づいてる?』

ひどい言葉に泣きそうになったけど、栞ちゃんの言うことは間違っているわけでもなかった。

蒼があたしなんかを、好きなはずない。

幼なじみだから、あたしは蒼のそばにいられる。

『蒼くんは、絶対に栞のものにする…アンタなんかに協力を頼んだのは、間違いだったみたいね。じゃ…』

その場を去ろうとした栞ちゃんの左腕を、とっさにつかんだ。

『何よ?離して』

栞ちゃんはあたしの手を思いきり振り払った。

『アンタさぁ、蒼くんに気持ち伝えて、フラレんのわかってるから、何も言わないでそばにいるんでしょ?』

そう言って栞ちゃんは鼻で笑い、あたしを上から冷めた目で見下ろす。

『…ずるいね、アンタって』

『自分でもわかってるよ…そんなの』

ずるいよ…あたし。

今までの関係が壊れるのが怖くて仕方ない。

だって今は、理由がなくてもそばにいられるもの。

幼なじみだから、一緒の家で暮らすこともできて。