栞ちゃんの顔は、余裕な表情だった。

こんな可愛い子に好きなんて言われたら、誰だって嬉しい。

女の子のあたしから見たって、可愛いと憧れるほどの存在だもの。

蒼だって男の子だから当然、可愛い女の子と付き合いたいに決まってる。
断る理由なんてない。

『…栞ちゃん、ごめん』

自分の胸のあたりをぎゅっとつかんで、栞ちゃんの目を真っすぐに見つめた。

嫌だ…やっぱり。
どんなに考えたって、嫌なの。

蒼が他の誰かを想うなんて、蒼が誰かの彼氏になるなんて。

絶対に嫌…。

『綾音ちゃん…?』

『あたし…協力はできない…』

今まで、危機感がなかったんだ。

蒼はいつまでも、あたしのそばにいるわけじゃない。

伝えなきゃ、伝わらない。

幼なじみから、一生…抜け出せない。

『今…協力できないって言ったわけ?』

一瞬、自分の耳を疑った。
さっきまで話していた明るい高い声とは違う、栞ちゃんの声。
冷めた低い声が聞こえた。

『やっぱり好きなのね。蒼くんのこと…』

栞ちゃんの言葉に、うなずくことも否定することもできなかった。

明らかに先ほどまでの雰囲気とは違う栞ちゃんが、そこにはいた。

『…ふ〜ん。せっかく友達になれると思ったのに…残念ね?』

『栞ちゃん…』
鳥肌が立つほどに、急に態度や声のトーン、目つきまでもがガラリと変わった。