『…可愛い子だったね。栞ちゃん…』

『そうか?』

『えっ?あたし…あんな美少女、生きてきて見たことないよっ?』

蒼は、特に興味なさそうな顔をして、歩き出した。

『おまえ…大げさじゃね?』

『えー?そんなことないよぉ。しかも、カラコンだったじゃん。オシャレ〜』

地面に落としたのは、グレーのカラーコンタクトだった。

あんなに可愛かったら、自分に自信が持てるのに…

蒼に好きって…言えるのにな…。

どうしてあたしは平凡な顔に…
生まれたのよぉ…。

『本当に可愛いって思わなかったの⁈』

『しつこいぞ、綾音』

『むぅーー!』

あたしは頬をふくらませた。

『何で怒ってんだよ?』

『べ・つ・に!』

蒼ってばどれだけ、理想が高いのーー?
あの子を何とも思わないなんて、あたしなんて全然ダメじゃん。

前途多難とは、こういうことを言うのね。

『蒼ってさわどんな子がタイプなわけ?』

『なんだよ急に…』

知りたい…
蒼が、どんな女の子を好きになるのか…。

『今まで聞いたことなかった気がするから』

自分で聞いておいて、緊張するなんて…
あたしは思わず息をのみ込んだ。