右手で、あわてて美々ちゃんの口をふさいだ。

美々ちゃんは、あたしの右手を振り払い、興奮を抑えきれないみたい。

『一緒に暮らすことになったって…大チャンスじゃーん♪』

『全然チャンスじゃないし。ドキドキして気が休まらないよぉ』

『バカっ!小さい頃から一緒にいて、今さら緊張してんじゃないわよっ!こんなチャンスないよ⁉︎』

美々ちゃんが、あたしの肩を力強く叩いた。
痛いし…。

あたしは叩かれた肩をさする。

『それに!綾音、見て、あれ…』

美々ちゃんが指さしたのは、廊下にいた蒼と…知らない女の子が、笑いながら話している姿だった。

ーーズキッ。

胸が痛む。

見ていられなくて、すぐに目をそむけた。

『…相手の女の子…可愛いね。他のクラスの子だよね』

ヤキモチ焼いてる、あたしがいた。
ヤキモチなんて何度も何度も焼いてるのに、どうして慣れないんだろ?

『蒼くんモテるんだから、いつ彼女ができてもおかしくないのっ!』

美々ちゃんは、人さし指であたしのおでこをツンと押す。

『はい…わかってます…』

あたしだってわかってるよ…
美々ちゃん…。

でもね…
あたし自分に自信がないの。
世の中の恋する女の子たちは、みんなあたしみたいに不安に思うの?

気持ちを伝えるって、すごく勇気がいることだもん。

『脱っ!幼なじみ!…綾音も繰り返してっ』