大きな明るいママの声に、後ろを振り向く。

ママが笑顔で、大きく手を降っていた。


蒼との突然の同居生活。
何だかんだで、今日から楽しい高校生活が始まると思っていたのに…。

人生はそんなに甘くないんだってことを、あたしは思い知ることになる。



学校までの桜並木道を、足早にあたしは歩いていく。

『おい、綾音!いつまで怒ってんだよ?』

蒼が後ろからあたしの腕をつかみ、グイッと身体を引き寄せる。

『怒って当然でしょ?ホント最低〜』

あたしは蒼の顔を、下から思いきりにらみつけた。

『わざとじゃねぇんだって…ホントに…寝ぼけてて…たまたまだって…』

あたしの気持ちも知らないで…

バカっ……

プップー・・・ーー‼︎

突然、車のクラクションが聞こえた。

『危ねっ!』

あたしは怖くて、ぎゅっと目をつむる。

ブォォォォン・・・ーー。

運転の荒い車が、勢いよく走り去っていった。

目をゆっくり開けると、あたしは蒼の胸の中。
車にひかれそうになったあたしの身体を抱き寄せ、蒼がかばってくれている。