『ゴホンッ。というわけでまぁ…今日から蒼がうちで暮らすわけだ。楽しく暮らしていこうな?』

おじちゃんの言葉に、みんなはうなずく。

おじちゃんは、マジでいい人なんだ。

今まで何度思ったかな。

綾音の父ちゃんが俺の父ちゃんだったら…
どんなにいいかと…

『えーっと…お世話んなります。よろしくお願いします…!』

みんなでビールとジュース片手に乾杯した。

この家は温かい…

家族ってこういうモノなんだろうと…
昔からずっと感じていた。

隣に住む綾音がうらやましかった。

俺の家とは、全然違うから…ーー。


夜もふけて、みんな各部屋に戻っていった。

『やっぱ…綾音ん家の家族は最高だな』

ひとりつぶやき、俺は部屋の窓を開ける。

春の夜風がそっと部屋に吹き込んだ。
桜の花びらもヒラヒラと部屋に舞い込んでくる。

『まだ…さみぃな』

夜空を見上げると、星が見えていた。

隣の部屋に綾音がいる…
今まではずっと隣の家だったけど…
今はもっと近くだ。

けど…距離は近くても何も変わらない。

俺と綾音は、ただの幼なじみ…ーー。

心の距離は…縮まらない。