『そっかぁ…あたしも嬉しいっ!蒼、サッカーうまいもん。頑張ってねっ』

聞いちゃいねぇ・・・。

『・・・適当にやるよ』

綾音は鼻歌を歌いながら、機嫌よさそうに、俺の腕を引っ張りながら廊下を歩き出した。


・・・俺には、ずっと片思いをしている女がいる。

物心がついた頃には、俺の隣には、いつも綾音がいた。

俺の隣で、いつも笑っていた。

ずっと一緒にいるのが当たり前で、俺にとっては兄妹のような、家族みたいな存在になってた。

小5の時、ある事件が起きた。

それをきっかけに、自分の気持ちに気付いた。

‘‘綾音が好きだ’’

そう、女として。

でも、それからもずっと……、俺は幼なじみとしてしか、綾音に接することができなかった。

ーー・・・新しい教室は、木の香りがした。俺と綾音は教室の窓から外を眺める。

『蒼・・・すでに人気だね』

隣で綾音がポツリとつぶやく。

『何が?』

『入学早々、女の子たちから騒がれてんじゃん』

『別に・・・興味ねぇけど?』