つぎの日の放課後。
わたしと加宮さんが電子ピアノを持ってくると、教室は異様に静かだった。
綾野が窓際に座っている。
ほんとに来てくれた。
わたしは嬉しかったが、みんなはそうでもなさそうだった。
「じゃあ、はじめよっか!」
そうわたしがみんなに声をかけるが、いつものような元気がなかった。
「…俺どこいけばいいの」
むすっとした表情の綾野がわたしにそう言ってくる。
そうだ、初めてだから場所教えてなかった。
「えっとね、一番後ろの…相田くんの隣だよ」
相田くんは成績優秀のガリ勉くん。
あだ名は、彼の細身の体とガリ勉からとったガリガリくん。
「りょーかい」
そう言って綾野が相田くんの隣に行くと相田くんは綾野から少し距離を取る。
周りの男の子たちも綾野から距離を取った。
…そうなるよね、喧嘩強いから怖いよね。
みんなが整列したところでとりあえず最初から歌ってみる。