「…ごめんな」
そう言うと綾野はわたしを離す。
ゆっくりと、手を離していく。
「わりぃけど今日も帰るわ」
綾野はわたしに背をむせた。
「…でも」
わたしがそう言うと綾野は振り向いた。
「明日からは参加する。約束するよ」
片手をひらひらと中に浮かせて昇降口から出ていった。
わたしは綾野に抱きしめられてから頭が妙にぽーっとしていた。
腕が、顔が熱い。
それとあの“大切なもの”とは何なのかわからなくてもやもやとしたまま。
わたしは少し地面から浮くような足で教室へ戻った。
「茹でだこみたいだぞ」
こう宮沢に言われた。
みんな綾野がいないことだけ確認して深いことは聞いてこなかった。
「明日から来るって」
わたしがそう言うとみんな微妙な反応。
…大丈夫かなこれ。