「なぁ!これ持ってて!」
そう言って綾野はわたしにジャージを投げる。
受け取った途端、綾野の匂いがする。
懐かしい気分。甘くて優しい匂い。
でもなんでジャージ持ってるのか疑問に思った。
今の時期暑いしみんなジャージなんて持っていない。
わたしは日陰で動いていないから少し寒いけど…。
「…あ」
察した気がした。
わたしが寒いと思ったから貸してくれたの?
でも別れているしわたしのこと嫌いでしょ?
頭のなかでもわもわしながらジャージと綾野を交互に見るが、やはり答えはない。
「…期待しちゃうじゃん」
別れたのには訳があって本当は好きなんじゃなんて思ってしまう。
ジャージ渡されただけなのに何考えてるんだか。
そう思いながらわたしは1時間綾野のジャージを抱えた。