あの後、加宮さんは一人で帰ってきた。
「見失いました。不覚 」
そう言って自分の席について、次の授業の教科書ノートを出す。
授業のチャイムが鳴っても宮沢は帰ってこなかった。

放課後、いつものように部活。
「話しはね、翔くんから聞いたよ」
実樹は悲しそうな顔をしている。
「…ごめんね」
「違うの!謝れとかじゃなくてね…。怒るとかじゃなくて、むしろ逆に嬉しいよ。あんちゃんのこと好きになってもらえて」
でもね、と実樹は話しを続けた。
「…大事な話があるの。部活終わったら駅にいこう?」
わかったと返事をして、わたしは林先生から頼まれた仕事をする。
でも、頭は綾野でいっぱいいっぱいだった。
なにを言われるのか、綾野になにがあったのか。
気になって仕方がなくて。
その日の1日はやけに長く感じた。