「ち、近くねぇか?」
気づいたらわたしは綾野の腕をがっちり掴んでいた。
「ご!ごめん!怖くって!」
「あ!いや、嫌なわけじゃなくてな!」
途中で立ち止まってわたわたする。
それからはお互い少し距離をとって歩いていった。
するとわたしの目の前に逆さまの女の人が現れる。
「ひっ…」
「うわぁぁぁ!」
何故か逆さまの女の人にグーパンチを喰らわせる綾野。
人形だったみたいでブラブラしている。
それが逆に怖い。
わたしたちは絶叫しながらお化け屋敷をでた。
…こわかった。
「は、はは。殴ちまった」
綾野が笑っている。
「よかったね、人形で」
「あぁ、ビックリしちまって」
わたしはボサボサになった髪を手櫛でなおしていると綾野はわたしの髪に手を触れる。
「由梨香の髪ってサラサラだよな〜」
「そうかな?」
「うん、触り心地いい」
それからしばらくわたしの短い髪の毛で綾野は一人で遊んでいた。
わたしも大人しく触られていた。
嫌な気はしないし、むしろ嬉しいというか。
わたしが自分の髪を痛めたりしないように意識し始めたのは綾野の影響かな。