医師の診断の結果、部活は諦めるしかないと言われてすごくショックを受けた。
歩くことはできるし、完治すれば軽いジョギング程度ならできる。
それじゃダメなんだよ。
駅伝も控えてるしただでさえ部員が少ないのに。
付き添いに来てくれた母が心配そうにわたしのことを見る。
「由梨香…生活には支障がないみたいだし、部活は残念だけど…」
「ごめんちょっとトイレ」
由梨香!とか細い声で叫ぶ母。
松葉杖を付きながら、母から逃げるように個室に逃げ込んだ。
その中で、声が出ないように松葉杖を付いている逆の手で口を抑えて泣いた。
実樹、雅…みんなごめんね。

しばらくするとケータイが震えた。
マナーモードにしてあった二つ折のケータイを開くと、同じ長距離の男子の早川隆生からだった。
普段はお互い馬鹿にし合うようなきょうだいのような関係。
そんな隆生からメールがきて、わたしはびっくりした。
[大丈夫か?]
たった1行だが、怪我をした悲しさと苦しみと苛立ちとでいろんな感情が混ざってまた泣けてきた。
わたしは震える手で文字を打った。
[わたし、もう走れない]
送信をしてケータイを閉じようとしたら、他からもメールが来ていた。
[どうだった?大丈夫? 実樹]
[大丈夫ですか?心配です みやび]
みんなの優しさに申し訳なくて仕方がない。
[車にいるからね]
母からもメールがきていた。
ごめんね、みんな。
ごめんなさい。