宮沢が数年間も持ち歩いていたうさぎのぬいぐるみ。
ずっと返したかったぬいぐるみ。
「…なんで?」
「宮沢からだよ、ほら手紙もありまーす」
実樹の目がうるうるしている。
「…翔くんが??」
わたしは頷く。
手紙を持つ手が微かに震えている。
手紙を開いて実樹はなにも言わずに読む。
読み終わっても何度も読み返す。
そして、涙がこぼれた。
その涙がうさぎにおちる。
「うさぎさんの腕、見てごらん?」
「腕……あ、ある…取れちゃったはずなのに…」
うさぎの腕の繋ぎ目を見て一瞬目を見開いて、そして微笑む。
「なにこれ…すごいへたっぴ…汚いし」
そう言う実樹はすごく嬉しそうにしている。
「ごめんねの気持ち…届いたかな?」
実樹はわたしを見て笑う。
「確かに届いたよ。数年間かかったけど」
帰り道、実樹はぬいぐるみを抱えて帰っていった。
紙袋に入れずに、嬉しそうに。