始業式から1ヶ月経った日の休み時間、加宮さんはわたしの顔をのぞき込んでこう言った。
「席替えです。由梨香さんとはお別れですね」
「そんな大袈裟だよ」
「わたし達は席が離れてもズッ友ですよ」
わたしは、はいはいと適当にあしらってくじ引きで決めた席に移動した。
一番後ろの窓側だった。
ちょうどグラウンドが見える。
わぁー当たり席なんて思っていた。
すると、隣から声が聞こえた。
「お隣さん、よろしくな!」
声の方に顔を向けると、綾野がいた。
「…ん?」
「お隣!俺!よろしく!」
すごい笑顔。
「…あ、よ、よろしく…」
「わたしもよろしくお願いします」
前にはいつの間にか加宮さんがいた。
「おー!よろしく!」
「加宮さん!同じなんだ!」
加宮さんは少しテレテレしながら言った。
「わたし達はズッ友なので…」
それを聞いた綾野はまた爆笑。
なにこの席すごい楽しい。
新しい席に盛り上がる生徒達を落ち着かせて、先生が話を始めた。
「結構仲いい子が集まっちゃったみたいだけど、授業中は静かにね!あと、遠足はこの班だから、みんな喧嘩ないようにね!」
班ということは、加宮さんと綾野…あとは綾野の前の…。
「おー!翔か!よろしくな!」
綾野が前の人の背中をばんばん叩く。
彼は宮沢翔。バスケ部で、運動神経抜群な上にイケメンですごいモテる。
でも綾野と違って無口だからわたしはあまり…。
「賢太(綾野)…うるさい」
「ははははは!」
対照的すぎでしょう。
「せっかく同じ班なのでズッ友記念に交換ノートなんてどうですか」
「おぉ!いいなそれ!」
「…意味わかんねぇよ」
なんか、面白くなってきた。

こうしてわたしと綾野、加宮さんと宮沢は出会った。
始まりは偶然からだった。