わたしが腰掛けると陸生は重そうな口を開いた。
「…このまえは…ほんとごめんな」
今までの陸生からは想像できないか細い声。
まだ気にしていたの?
「気にしないで?わたしは大丈夫」
できるだけの笑顔をつくった。
しかし陸生は笑わない。
「同じ陸上の選手として怪我の辛さはよくわかっているつもりだった。なのに俺はあんなことを言った…」
陸生も一年生の時よく怪我してたっけ。
そのたび悔しそうにしていた。
なにか声をかけたかったけど声をかけれない。
わたしは陸生の立場になっているんだ。
「なにか、言ってやりたかったんだ。元気づけてやりたかったのに…ごめん」
陸生がそんなこと思っていたなんて。
「…陸生」
「お前がいるとなにかちょっかい出したくなるんだ。考えていることと逆ないじわるしちまう…」
なんかいつもの陸生じゃないみたい。
「陸生は陸生だよ。わたしはいじわるな陸生のこと嫌いなんて思ったことないもん」
わたしの言葉に陸生はやっと目を合わせてくれる。
この前の綾野みたい。
「わたしは長距離のランナーの資格はなくなったけど、みんなのサポーターになることにしたの。走れない分、走れるみんなを支える。もう、この前のことなんて気にしてないから」
わたしの言葉に陸生は頷いて走っていった。
今日の陸生、不思議だったな。