「最近由梨香よく笑う」
部活中に実樹はそう言ってわたしのほっぺを引っ張る。
「前からよく笑ってるよ?」
わたしがそう言うと実樹は、いいえと言いたいのかさらに引っ張った。
「いひゃい!いひゃいって!」
「笑うのはいいことだよ、実樹は嬉しい」
はぁ?と言う感じだった。
「実樹は笑ってる由梨香が好き」
「わかっひゃ!わかっひゃからはなひて!」
ギャーギャー騒いでいると顧問の林先生がちゃんとやれー!と怒っていた。
ふてくされる実樹を見て後輩たちは笑っていた。
「じゃあアップに行こうか」
わたしと実樹が先頭になってグラウンドを走りにいく。
陸上部の長距離部員は2年はわたしと実樹、一年生は四人という少ない人数だった。
三年生は問題行動で早めの引退…。
男子は多い。短距離も多い。
日が沈んできて、辺りはオレンジ色に染まった。
多方のメニューが終わって実樹と水を飲んでいるとサッカー部がランニングをしていてわたしたちの目の前を通った。
その列の中には綾野がいた。
ふと目が合った。
その時、時間が止まったように感じた。