宮沢が爆睡して寄りかかっている綾野を見て言った。
「なあ、誰かマッキー持ってねえか?」
「私持っています」
加宮さんがカバンからマッキーを取り出す。
なにをするのかはわかっていたけど、あえて口出しをしないでゲゲゲの鬼太郎を見た。

途中なのにDVDを切るバスガイドさん。
あの神経はありえない。
「もうすぐ学校へ到着いたしまーす。お友達を起こしてあげてくだーい」
綾野、起きません。
おデコに〝肉〟と大きく書いてある。
右頬には〝馬〟左頬には〝鹿〟。
合わせて馬鹿。
これ、帰れるの?
「綾野、起きろ。重い」
落書きの犯人の宮沢が綾野を叩く。
「…あ?え、とあさ?」
「学校につくんだよ」
「…は、はや」
寝ぼけているようだ。
落書きに気づくにはまだ時間がかかりそう。
「楽しかったですね、遠足」
「うん!ものすごく!」
加宮さんはわたしの顔をみて微笑んだ。
「よかったです。由梨香さんが楽しんでくれて」
「ミッションコンプリィート」
宮沢が無表情で呟いていた。
「あれ?東京タワー…」
綾野はまだ眠たそう。
あぁ、落書き気になる。
「みんなのおかげだよ、本当に楽しかった。ありがとう」
あっという間だった遠足。
また明日からは授業がはじまる。
億劫なはずなのに楽しみだよ。