加宮さんは、はぁと一回ため息をついてカバンからティッシュと消毒液を取り出した。
「由梨香さん、あなたはそこの大馬鹿なガキの手当をしてあげてください。血があちこちについていて一人じゃ無理でしょう。私はこっちの無愛想なガキの手当てをしますから」
「あ、わかった」
宮沢は嫌だというように逃げようとするが加宮さんに掴まれて引きずられていった。
綾野と展望台で2人。
「…悪かったな」
「え?」
少し水で濡らしたティッシュで拭いていたときそう言われた。
「いや、お前のためにって…イヤな思いさせたな」
ちょっと子供みたいな顔をして綾野は俯いた。
そんな姿をみて微笑ましく感じる。
「綾野がやったことはよろしくないけど、わたしは嬉しかったかな」
綾野は、ぱっと顔を上げる。
「暴力はダメだよ?でも守ってくれたんだね。ありがとう」
ニッと笑う綾野。
「気にすんな!俺はお前が見てて危なっかしいからよ、助けが必要なら飛んでいくぜ!」
まただ。
胸がクッと苦しくなった。
「…ありがとうね」
左の鼻に丸めたティッシュを詰めてニコニコしている綾野。
それを隣で見るわたし。
やっぱり落ち着くな。
綾野の隣って。