「わー!たかーい!」
「見てください、建設中のスカイツリーが見えます」
よく見るとぼんやりと途中までできているスカイツリーが見える。
「あれがどのくらいまで大きくなるのかなー!」
「634m、ムサシです」
「なんでもしってるね!」
まだ出来上がっていない、途中のスカイツリー。
近所のひとたちは芽が伸びるようにみているのだろうか。
「できたら、みんなでいきたいですね」
「うん!いきたい!」
スカイツリーに東京タワー。
周りにあるたくさんのビル。
東京って、すごい。
「あ、あのさ」
男の人の声がした。
振り返ると、そこには和田がいた。
「なんですか?」
私の前に加宮さんが割って入る。
よく見ると和田の顔が腫れている。
「顔…」
和田は一瞬びくっとした。
「さ、さっきは、ごめんな!それだけ!」
走って和田が逃げていく。
「和田さんにしては珍しいですね。それにあの顔…」
和田がいなくなって気づいた。
彼の後ろにあったアーチのところでニヤニヤしている綾野と宮沢がいた。
「ふ、ふたりとも!?まさか…」
「あぁ、少し青春してたわ」
加宮さんに支えられて急いで二人のところへ行く。
見ると綾野は鼻血、宮沢は唇を切っていた。
わたしがなにか言葉を考えていたとき、展望台で2回大きな音がした。
加宮さんが二人を引っぱたいたのだ。
「加宮さん…!二人は怪我を…」
「私達は約束したはずです。班長の由梨香さんから離れないって」
二人はバツの悪そうな顔をした。
「由梨香さんはあんなこと望んでいません。理由に由梨香さんは今笑っていますか?謝ってもらえてすっきりしたような顔をしていますか?」
わたしはきっと悲しい顔をしていた。
二人がわたしを見る顔がしょんぼりしていたからわかった。
二人はわたしを守ってくれたのに、素直に喜べない。