始業式から一週間、わたしは1人だった。
1人で移動教室、1人ご飯。
寂しかったけど仕方ない、友達がいない。
そんな日が続いていた。
ただ…、ひとつだけ楽しいことがあった。
クラスメイトの綾野賢太の存在だった。
彼はかなり馬鹿だ。
だけど見ていて楽しい。
授業中にもふざけた発言をしたりして先生を困らせているが、実はわたしはそんな彼を見て楽しい気分になっていた。
それからだと思う。
わたしが笑うことが増えたのが。

割り箸を鼻につっこんで爆笑している綾野。
馬鹿だななんて思いながら卵焼きを食べようとする。
ふと目の前に人がいるのに気づく。
委員長の加宮愛華だった。
真面目で成績優秀…しかし変わっている。
そんな彼女が目の前で私をガン見している。
「ど、どうしたの」
私は彼女に問うてみた。
彼女は真剣顔で言った。
「卵焼き…って美味しいです」
これが加宮さんと仲良くなるきっかけだった。
かなり印象強いので忘れられない。
この日から加宮さんとは一緒に行動するようになった。
話しかけた理由は、なんとなくだそう。