「病は気からって知ってるか?怪我もそれに似たようなものだ。治せる、いや治す治してやる!それで俺は今、グランドでボールを追いかけている」
明るい綾野にそんなことがあるなんて知らなかった。
わたしは相槌も打てずにただ真剣な綾野の目を見つめていた。
「鈴崎、お前まだ走りたいんだろ?」
突然の問に体がびくっとする。
「うん…走りたい」
綾野はニッと笑う。
あ、いつもの綾野だ。
「だったら尚更だ。どんな怪我でも気合があれば治っちまうよ!」
「…そうかなぁ」
「大丈夫だ。俺を信じろ」
綾野の目は真っ直ぐだ。
切れ目で細く見える目なのに近くで見ると綺麗。
…ちかい?
見るみる間にわたしの顔が赤くなる。
自分でもわかる。
熱い。
「あ、えと、ありがとう。綾野」
「気にすんな!お互い頑張ろうぜ!お揃いの怪我なんだからすぐ治る!」
綾野の顔はまたニヤニヤした顔に戻る。
…真剣な顔、はじめてみた。
しかもあんな至近距離。
すごくドキドキした。