もう遠くから見たらキスしているような距離で祐也が菜々子から離れる。
「…不発」
「だね」
一言二言交わしたあと、二人は別々の階段を登っていった。
わたしたちは出会さないように時間を潰してから駅に向かう。

ちょうど帰宅ラッシュにハマって電車は満員。
窓側にわたし、目の前に賢太。
わたしの両肩近くに両手をついている。
後ろに人が多くてバランスが取りにくいみたい。
「わ、わりぃな」
下を俯きながら賢太がそう言った。
「だ、大丈夫」
すごく近い。恥ずかしいくらい。
地元の駅について、今日のことのお礼をして解散した。
またな!と笑顔で手を振る賢太。
…すきだなぁ。

その日、菜々子と祐也から連絡がきた。
菜々子はすごく嬉しかったようで、偵察した意味がなくなるほど事細かく教えてくれた。
祐也からは上手くいったありがとうと来ていて、わたしは祐也に聞いてみた。
[菜々子のこと、大事にしてあげてね?浮気なんてしたら許さないからね!]
しばらくして返事が来た。
その内容は…。

[当たり前だろ。すきなひとなんだから]