駅前は帰宅を急ぐ人で溢れていた。
はぐれないようにまたお互い手を握る。
二人は改札を通ると、方向が逆(学校からは方向同じだけど菜々子より祐也こ方がずっと遠いから逆になる)だから、ここの駅でばいばいだ。
大きなぬいぐるみを抱えた菜々子が何度もお辞儀をしている。
よく見たら菜々子の肩に祐也の上着がかかっていた。貸したのだろうか?
祐也はそんな菜々子の頭を撫でている。
微笑ましい正直。
「なかなかやるなぁ、祐也ってやつ」
「わたしも見直しちゃった」
「…由梨香は俺だけ見てろよ〜」
そう言って賢太がわたしの頭をぐしゃぐしゃにする。
「きゃ〜!ぐしゃぐしゃじゃんー!」
賢太がすごい笑ってる。
馬鹿にしてる。
「お返し!…って届かない」
「もう中学の俺とは違うからな〜」
自慢げにわたしを見下す。
「まったく」
また菜々子と祐也に目を向けると、なかなかいい雰囲気になっていた。
駅で…?まさか駅で?
「チューか?チューすんのか?」
「…しそうだね」
わたしたちは思いっきり見ていた。柱から。
祐也がだんだん菜々子に顔を近づける。
菜々子も受け入れるように動かない。
後少し、もう少し…。