「けっこう、うまいなこれ!」
「過去食べてきた中で上位だよ!」
ぼろぼろの店なのに美味しい。
「そりゃあ、もう何十年もラーメン作ってるからな!」
そう言ってラーメン屋さんのおじさんは笑う。
「ここをみんな知らないなんてもったいねぇな〜教えるのも惜しいけどよ〜」
「惜しまず周りにどんどん教えてや!」
「えーやだ」
賢太とおじさんはすっかり仲良し。
わたしはぼろぼろの窓から向かいの二人がいる店を見る。
うまくいってるかな。
「はいよ!餃子サービス!」
「いよっ!いいねおじさん!!」
二人盛りの大きい餃子。めちゃくちゃ美味しそう。
「すいません、ありがとうです」
「いいっていいって!」
そういっておじさんはまた厨房へ戻る。
「由梨香ラー油取って取って」
「はーい」
食べきれなさそうな餃子を食べ終わったとき。
向かいのレストランのドアが開く。
そこにはおおきなくまのぬいぐるみをかかえた菜々子と照れくさそうに髪をかく祐也。
「やばい!二人が店から出た!」
「ぶっ!…っまじかよ、おやじ勘定!!」
吹いた水を拭いながらカバンからお財布を出す。
わたしもお財布を出そうとすると、いいってと言って賢太が会計を済ます。
「ごめんね、ありがとう」
「いいから急ぐぞー!おやじまた来るから!」
「わたしもまた来ます!」
「おー、またサービスしてやるからなー!」
おじさんの店はわたしと賢太が周りの友達に教えてから大繁盛。部活終わりの生徒や勉強に疲れた生徒で賑わうようになった。