土曜日の公園。
長袖はもう辛いくらいの暑さ。
セミが少し出てきている。
わたしは日陰で流れる汗を拭きながら人を待つ。
「わりぃ!」
そう言いながらわたしのところに走ってくる。
その人は綾野賢太。わたしの好きな人。
また付き合い直してから一週間、ようやくこの日に会えることになった。
久々に見る賢太の背は伸びて、髪型も男らしい。顔を大人びてよく映画やドラマに出ている俳優にますます似てきた。
わたしの目の前に賢太がきて、わたしのことを抱きしめる。
あの日の昇降口のように。
「…苦しいよ」
わたしの言葉を他所に賢太はわたしのことを強く抱きしめる。
久々の賢太の匂い。
懐かしさの余り、わたしは泣きたくなる。
「…ごめんな。たくさん傷つけたよな」
そう言うとそっとわたしを離す。
そして賢太が顔を近づけてくる。ゆっくりと。
遠くで子供の笑い声がする。ボールを蹴る音と、近くの小川の水が流れる音に木が揺れる音、セミの声。