バレンタインを直前にした日。
「意外とうまくいかないのね…」
ガチガチのクッキーに焦げたクッキー、生のクッキー、やけにふくらんだクッキー。
「料理なんてめったにしないからなぁ」
悩んだ末に由梨香に聞くことにした。
スライド式のケータイを開けて由梨香に電話をかける。
数回コールした後はーいと由梨香の声がする。
「もしもし?ちょっとクッキーについて聞きたくて」
「え!手作りなの!!」
電話の先で喜ぶ由梨香の声。
「ははは…ちょっと難しくて」
説明していくと由梨香はこう答えた。
「クッキーは焼き上がりが少しだけ生の方がサクサクに仕上がるよ!少し置いておくとできるから!」
少し生…。
「おっけ!ありがとうね由梨香!」
「いいえーできたらちょうだいねー!」
電話を切ってケータイを閉じる。
腕をまくって気合を入れる。
「よし!」