綾野は日曜日の試合で相手校の人に足をスパイスで踏まれてしまい、骨折してしまったらしい。
それが頭から離れなくて授業どころじゃなかった。
自分のことも考えなきゃだめなのに。
なんでこんなに苦しいんだろう。
綾野で頭いっぱい。

お昼休み、加宮さんと宮沢とご飯を食べた。
「鈴崎…賢太のこと好きだろ」
わたしは思わず加宮さんの好物の卵焼きを落とす。
この世の終わりのような雄叫びをあげる加宮さんを余所に、わたしはポカンとする。
わたしが、綾野のこと、すき?
「予想だけどね…よく見てるから」
「え、うそ。そんなことない」
宮沢は、ふーんと言って配られた牛乳パックを開ける。
「言っとくけど、賢太はあまりよろしくないよ。理由は言わないけど」
「どゆこと…?」
「まぁ、どうするかはお前らで決めな」
加宮さんは冷静を取り戻したようで何事もなかったかのように背筋をピンっと伸ばしてタコさんウィンナーを箸で摘みながら宮沢をじっと見ている。
「…なに」
「今日の宮沢くんはよくしゃべります」
「確かに」
うるせぇというように眉をひそめて牛乳を飲んだ。
「いいと思いますよ。自分の心が許した友人、つまり親友、つまりズッ友にはなんでも話すべきです。馬鹿になんてしません」
「…なんなんだよズッ友って」
わたしは牛乳パックを開けてストローを刺そうとした。
見ると牛乳パックのストローを刺すところがまるくめくれていた。
あたりだ。