僕がうとうとしていると、遠くの部屋で電話のベルが鳴っているのに気付いた。

それを祖母が取ったようだ。

そして、祖母らしき人物の足音がこちらに向かってくる。


「達也。お母さんから電話だよ。」


祖母は部屋の襖をあけ、僕に電話の子機を差し出した。


「ありがと。」


僕はそれを受け取り、耳にあてた。

「もしもし。」


僕が喋り出すのとほぼ同時に、祖母は部屋の襖を閉じた。



<もしもし?達也?そっちはどう?お金今日振り込んだから、おばあちゃんにちゃんと渡すのよ。じゃあね。>


たったそれだけだった。

母の電話はいつもこうだ。
毎月僕の口座にお金を振り込んだ日に電話をよこし、祖父母に必ず渡すようにとの念押しをする。


僕の話しは聞く事はない。

毎回、こっちの様子を尋ねてくるがそれはただの挨拶代わりの文句だった。



僕は部屋を出て、子機を充電器に戻した。

「もう終わったのかい?」
「うん。」


そして、僕は再び部屋に戻った。