その建物には、木の板に毛筆で『海神村人魚博物館』と書かれた看板が掲げられていた。


(人魚博物館?)


僕はそこが気になって入ってみようと思った。

しかし、料金案内を見てそれを断念した。



『入館料 1500円』


高すぎる。

僕の財布の中は、さっきアイスを買ってしまった為、残り800円程しかない。いや、たとえアイスを買わなくても到底足りなかった。


ついでに涼めると思ったが、先立つ物がない以上僕はここから先には足を踏み入れられない。



ぼくは諦め、腕にはめていた時計を見た。

まだ家を出て一時間しか経っていない。


もう無理だ。

いくら初夏と言えどこの暑さ。

僕はうるさい掃除機の音と舞い上がる埃にまみれる覚悟をした。



そして、僕は体の向きを変え、今度は海を背に来た道を戻って行った。



しかし、僕は何故だかわからないが、どうしてもあの博物館が気になって仕方なかった。


明日、お金を補充してまた出直そう。