その噂が流れ始めて程なくした頃から、今までの恵みが嘘の様に村を大干ばつが襲ったのである。

待てど暮らせど雨が降る気配はなく、蓄えも底をつき頭を悩ませた村人は村長を筆頭に何日も何日も萌黄山の寺に祀られた神に雨乞いをした。


しかしそれも虚しい結果に終わった。


誰が言い出したか、雨が降らないのは海に現れた人魚のせいだとなった。

『人魚が村に災いをもたらした』

『人魚を寺に贄として奉納すればまた雨が降る』

村人たちは全ては人魚が現れたせいだと解釈したのだった。
それから村人たちは昼夜問わず人魚が現れるのを待ち続けた。


そして満月の夜。真っ黒な海から光をまとう様に美しい人魚が現れた。
待ち構えていた村人たちはその美しさに一瞬吸い込まれそうになった。しかしそれもわずかの間。人魚はあっという間に村人たちに捕らえられてしまったのである。