教授は欲しい情報なんてくれなかった。


質問を繰り返すうちに、結局、『質問の意図が見えない』とのことで、進行に席に追い返された。


席に戻れば、仁奈子が俺のスーツをわし掴みにして問いただす。


「ちょっと…、瞬くん!もしかして、あのデータちーちゃんなの!?」


「・・・わかんねえよ。でも、可能性はあるだろ。」



ブザーが鳴って、この時間の講演が終わった。



俺は次の会場に入る直前で、先輩に止められた。


さっきの一部始終を後ろの席から見ていたらしい。



「お前学会なめてんのか!?質疑応答は10分って、秒単位で決まってんだよ!妨げるようなことするな!」



「・・・わかってます。すみませんでした。」



「病院名堂々と下げてんの忘れんなよ!恥さらしだ・・・ったく。」


首から下げた名札をバシンと胸に叩きつけられた。


・・・このヤロ・・。


って、こぶしを振り上げるのは我慢した。



先輩が去っていく後ろ姿に舌打ちして、会場に入ろうとしたとき。



さっきの教授をみつけた。




「・・・あの!」


俺は教授の肩を叩いた。
振り返る教授は眉をひそめ、明らかに嫌そうな表情を浮かべてる。



「君はさっきの。」



「さっきはすみませんでした。でも、どうしても教えてほしいんです。」



「あのねぇ、自分のしたことわかってんの?」


「すんません。・・・コレ、食っていいっすから。話だけお願いします!」



さっき並んでたセミナーで配布される数量限定の高級弁当をワイロに差し出すと、教授の口元に笑みがこぼれた。



「・・・おう。そうか。それならまぁ、そっちに座りなさい。」



・・・よっしゃ。


廊下のソファに向かい合って座った。


教授は弁当を開いて、俺の話に耳を傾け始めた。