仁奈子も俺も二次会の予定があるから、そろそろ学校を出る時間だ。


正門へ向かう玄関付近には女子が構えてる。だから裏門から出た。



「瞬くんさ。仁奈も感謝してるよ。」


ぽつり、仁奈子が呟いた。



「そーかよ。どーも。」



俺はなんとなく照れくさくて、さっと流したのに。



「…でも、瞬くん、仁奈は感謝されるようなこと・・・できてないんだよ。ちーちゃんが大好きなはずなのに・・・変なの。」




仁奈子は俺の制服をぐいっと引いた。





「ちーちゃんのこと大好きな瞬くんを・・・好きになっちゃったって言ったら、どうする?」




「・・・は?」



思わず固まった。


3月のまだ冷たい風が俺たちの間を通り抜けていく。





「どういう・・意味、だ。それは。」



「・・・ウソにきまってるじゃん。」



「・・・あ、っそ。」




ぎこちないまま、手を振って別れた。




「おっせえぞ、瞬!!」


北工のやつらと、二次会の会場へと向かった。



「俺、さっき彼女できたわ!」


いつのまにか、一馬に彼女できてるし。


「俺もすげえ可愛い子にアドレス聞かれた!」


彼女いるはずのやつも、そんなこと言ってる。



「瞬は?南高で・・まさか誰かと密会してたのか!?」



「お前らとは違えよ。」




・・・受験が全部落ち着いた、卒業のこの日にも。



ちとせから連絡がくることは無かった。