「・・・お前さ。今日は卒業式だろ。なんでスカートの下にジャージはいてんだよ。」


「寒いもん。それにそんな着崩した学ラン着てるひとに言われたくないんだけど。」



南高の正門付近で仁奈子に会った。



「「あの」」


お互いの声が重なった。


俺が黙ると仁奈子が続けた。



「ちーちゃんから連絡きた?」



・・・俺も同じ質問をしようとした。



「きてねえ。仁奈子は?」


「きてない・・・。どうしたんだろう。」


俯く仁奈子の背中をたたいた。



「どっかで頑張ってる最中だから。・・・だから連絡できねえだけだ。」



「・・・何か、前向きだね。」



「仁奈子に元気ねえと・・調子狂うだろ。」



「ははっ。なにそれ。」


仁奈子は俺の背中に鞄をぶつけた。



「・・・いってえな。なんだよ」



「・・・信じてようね。ふたりで。ちーちゃんから連絡来なくても、生きてるって・・・何も疑わないで、そう思ってようね・・・っ。」



仁奈子がまた泣きだした。


・・・ちとせといい、仁奈子といい


「進学校のやつらは、泣き虫ばっかだな。」



正門を大勢が通り抜ける。



しゃくりあげて泣いてる仁奈子。



「たけいしくーん!!」


遠くから、名前を呼ぶ声がした。



ま・さ・か・・・だ。



北工にさっきまで来てた女子どもが走ってくる。