「ちーちゃん見てみて!すごいよここ!よく見える!」


その仁奈ちゃんの声に、ギャラリーから下を覗くと、2つあるコートの両方がど真ん中から見える。


・・ここって一番いい席なんじゃないかな・・。


ストーブもあって足はあったかいし・・。




「試合終わるたび戻ってくるけど、帰りたくなったら言えよ。俺が降ろすから。」



そう言って瞬は次にでる試合の為に、両腕をストレッチしはじめた。



そういえば瞬がスポーツしてるとこなんて、初めて見るなぁ。


慣れたように準備体操してるだけ。


だれもがしてるけど、瞬だけなんでだろう・・・かっこいいなぁー。



「ちーちゃん?見惚れるの早いよ。」



仁奈ちゃんに言われて、ぱっと目をそらした。



「・・ほんと、瞬くんのこと大好きだよね。」



くすくす笑う仁奈ちゃん。




そしたら瞬の名を呼ぶ大声が下から聞こえた。



「瞬ー、降りてこいよ!次の試合のポジション決めっから!つーかお前センターでいいよな!?」



「あー待て!行くわ。」



瞬がタオルを掴んで階段の方へ向っていく。



その背中を目で追ったら、瞬がぱっと振り返った。




「ストーブ触んなよ。やけどするから。」



・・・ストーブでのヤケドに注意、なんて。出逢った日の話だよね。



「・・・あはっ。ありがとう!頑張ってね!」



ふっと瞬が笑って、階段を下りて行った。