着くと神咲くんはベンチに私を座らせ、その隣に座った。
何があったのかなあ…
「…あの…神咲くん」
「……なに」
なにって…
連れてきたの神咲くんなのに。
「…助けてって言ってたじゃない…」
あぁ。と思い出したように言うと神咲くんはくるりと私の方を向き、突然両手をとって、
「…俺を助けるために、付き合って。」
「……えっ!?ちょ、…」
つ、付き合う!?
え、え、ど、どうしよう!?
「……モデルと、ドラマの仕事に。」
「………へ?」
モデル?ドラマ?
……………なぜ私?
「頼めるの、神崎さんしかいないんだ……」
「…なんで…?わたしじゃなくても夏海とかいるじゃない」
「…それはーーーー」
少し俯いた彼は私に頼みたい理由を言った。
まとめると…
神咲くんの所属する事務所で、新人のモデルと、神咲くんが主演のドラマに出演できるオーディションを行った。
そこで、グランプリを取り、決まった子がいたのだが、撮影などをする前に諸事情により出れなくなった。
そこで急遽変われる子を【Rei】の目で見つけてきて欲しい。
と、言われ
たまたま私になった、との事。
…………うーん。
やりたいとは思うけど、私で平気なのかな…
「……神崎さんしか、いないんだ。
はっきり言ってグランプリの子なんかより断然綺麗だし…スタイルもいい。
…………それにあの子媚うざかったし」
最後の言葉聞こえちゃったけど聞かなかったことにしよう。うん。
でも…
「急に……そんな事言われても…」
そう言うとむむっと少し顔を歪めた神咲くん。
「やっぱりだめ、か…?」
目を伏せ考えこもうとした私の顔をのぞき込み、上目遣いで私を見る神咲くん。
う、わ。
ゆらゆら揺れ動く琥珀色の瞳。
困ったようにハの字を描く眉。
いまだ握られている両手。
………答えを出すのには充分過ぎた。
「……わ、わかり…ました」
「…やってくれる、のか?」
「うん…不安で仕方ないけれど」
そう言うと嬉しそうにふにゃっとした顔で微笑む彼。
ううう。その笑顔は反則だよ。
胸が、きゅんっと不思議な音をならした。