目覚めるとそこは車の中だった。
いつの間にか寝てしまったようだ。
窓の外はグレーがかった薄暗い世界が広がり、夜が更けたことを実感した。
「慎吾?」
運転席には慎吾の姿はない。
どこに行ったのだろう。
外にいるのかな?
ドアを開け、外に出ると、暦の上では春とはいえ、夜になるとグッと冷え込んでくる。
目が暗さに慣れてきて、
「慎吾?そこにいるの?」
ようやく慎吾らしき人影を見つけた。
「ごめん、ひとりにして。あんまり気持ち良さそうに眠っていたから起こすのが可哀相で……」
私は首を振った。
それにしてもここはどこなのだろう。
あちこち見渡しているうちに、ようやく思い当たった。
「あれ?ここ……大学病院の近くの丘?」
何度か向井先生と来たことがある。
もちろん、慎吾とだって。
「知らなかった、こんなに夜景が綺麗に見えるなんて……今夜は星空も見えて綺麗」
手すりに掴まり、星空と夜景を交互に見た。
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