分娩室に入ると、分娩監視モニターで胎児の状態をチェックした。
胎児の心音が途切れ途切れに聞こえ、心音波形もいい状態とは言えない。
恐らく自然分娩では胎児が持たない。
向井先生の奥さんもかなり消耗しきっている。
このままでは母子共に危険だ。
もう一刻の猶予もない。
「浅倉先生」
産婦人科の吉村先生に呼ばれた。
母体と胎児の安全を最優先し、帝王切開での出産を行うとの説明を受けた。
失敗は許されない。
もうやるしかない。
準備を済ませ、いよいよ手術が始まる。
「……ッ!!!!」
突然手術着の裾を引かれ、立ち止まる。
振り返ると、その手の主は手術台の上にいた。
「先生……私はいいから、子供を……子供だけは助けてください。お願いです、主人にこの子を……抱かせてあげたいんです……」
向井先生の奥さんが私に訴えかける。
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