「おう、里緒。散歩に行こうぜ。この辺を案内してくれよ」
・・・・・・ガクッ。
無理をしてでもなんとか前向きになろうと、せっかく努力したとこなのに。
一瞬でその気持ちを萎えさせる顔が、デーンと目の前に立ち塞がっていた。
「浄火・・・・・・」
「ん?」
「あたし、これからお岩さんの看病で忙しいんだけど!」
「でも人手なら充分に足りてるみたいだぞ?」
クイクイと浄火の手が背後を指差す。
なによ? と振り返ると・・・・・・
「岩さま! だ、大丈夫だかー!?」
「門川のモン食って、腹壊したんだって!?」
「だからいつも言ってるべさ! ここの土地以外のモンは、できるだけ口にするなって!」
権田原のおじさん集団が、ドヤドヤ!っと一斉に玄関になだれこんできた。
そしてお岩さんをぐるっと取り囲んでしまう。
「まだ下ってるだか!? 勢い良く下ってるだか!?」
「え、ええ、あの、まあ・・・」
「面会謝絶って聞いたぞ!?」
「一応、重症ということになってますの・・・」
「いったい何を食ったんだ? 生ものか?」
わーわーぎゃーぎゃー大騒ぎ。
心配そうにお岩さんを質問攻めにしてる。
お岩さん重症・・・の噂を聞きつけて、慌てて駆けつけて来たんだろう。
浄火の目の前で本当のことを言うわけにもいかず、お岩さんは困り果てている。
おじさん砦に囲まれて身動きもできない。