「彼は長老からの正式な客分です。来てしまった以上、追い返すわけにもまいりません」


「わたくしは面会謝絶の重病人ですのよ!?」


「謝絶する前に、ジュエル様の非常にお元気な姿を見られてしまいましたので」


「なにを弱腰なことを! いいわ、わたくしが直接追い出してやります!」



お岩さんは鼻息も荒く宣言して、ドレスを持ち上げながらドスドスと浄火の後を追う。


あたしは急いで呼び止めた。



「ま、待ってお岩さん。そんなことしたら面倒なことにならない?」


「なっても全然かまいませんわ!」


「いや、かまうってば」



さすがに長老の正式な使者に、当主本人が面と向かって『おめー、とっとと帰れ』 は、ない。


それじゃ宣戦布告と同じだ。


たたでさえ迷惑かけてるのに、お岩さんの立場を危うくするようなマネはできないよ。



「大丈夫だよ。できるだけあいつとは接触しないようにするから」


「アマンダ、でも・・・!」


「ババがいなけりゃ大丈夫だよ。平気だから」



ほんとは、あんまり平気じゃないんだけど。


それでも内心を悟られないよう、ニコニコ明るく笑って見せた。


お岩さんはそんなあたしの気持ちを汲み取って、しぶしぶ納得してくれた。



「・・・わかりましたわ。でも、決してわたくしのそばから離れてはだめよ?」


「うん。そうする」


「きっとわたくしがアマンダを守ってあげますわ」