―― ビシュッ


風を切る音が聞こえて、頭上の空気を揺らした。


攻撃準備の整った触手が、狙いすましてあたしに襲いかかってくる気配。


その槍のような先端の動きが、今にもあたしの頭部を貫こうとする寸前・・・


―― ビクッ!


跳ねるように震え、停止した。


そして怯えたようにフラフラした動きを見せる。


・・・あぁ、おそらくこの異形も感じているんだろう。


あたしの力を。


この、凄まじい力の高揚を。


この・・・・・・


暴走必須なほど燃え上がる、あたしの中に流れる天内の血を!


「よっしゃーーーーー!」


あたしはコブシを天に突き上げ、大声で叫びながらガバッと立ち上がった。


皮膚がビリビリ痛むほど、体も心も力があふれている。


周囲に気力が漏れ出し、陽炎みたいにユラユラと揺らめいていた。


破裂するほどの鼓動。


脳内にバチバチと飛び散る火花。


超特急で駆け巡る、灼熱の血。


体中が、花火製作工場の手の付けられない暴発事故みたいになっている。


でもあたしは、ほんの微塵も恐れはしなかった。


・・・むしろ来い! 来い! もっと来ぉい!


もうずっとフラストレーション溜まりまくりだったんだ!


「お待たせ門川君! 無敵の天内里緒の復活だよ!」


守ってみせるからね! あたしのこの手であなたを!


―― ゴオォォォーーッ!


暗い光に覆われた海岸一面に、灼熱の業火が躍り上がった。