「暴徒の衆を相手に、ひとりで立ち向かったってダメですわ!」


「オレが村の皆を説得する!」


浄火があたしの手を力強く握りしめ、皆の顔を見回して叫んだ。


「みんな行くぞ! まずは洞窟から出るんだ! 急げ!」


全員そろって出口へ向かい、全力で走り出す。


あの恐怖の板橋も、底を踏み抜かんばかりの勢いでドガドガと駆け抜けた。


薄暗い道に外の明るい光が差し込んでくる。


・・・よし、抜けたっ!


「近道するぞ! 道は悪いが頑張ってついて来い!」


浄火を先頭に、前のめりになって転がるように疾走する。


実際、上へと向かう坂道の足場はひどく悪く、あたしもお岩さんも何度も転んだ。


物も言わずに歯を食いしばり、大石の上を這うように無我夢中で前進する。


手足が石に擦れて傷付き、血が流れた。


でも痛みは感じない。


頭の中はしま子のことで一杯で、痛みを感じるだけの余裕はまるで無かった。


しま子。しま子。しま子。


別れ際、岩陰から笑顔であたしに手を振っていたしま子。


いつもの可愛い、あの笑顔で・・・


『いってらっしゃい。しんぱいしないで』


・・・あぁ、しま子! 今すぐ助けに行くからね!