「あの、長さん。ひょっとしてそれって勘違いじゃないですか?」
信子ちがいじゃないの?
きっと因業ババ以外にも、信子さんがどっかに居るんだよ。
優しくて素敵な、皆に好かれる信子さんがさ。
「そっちの信子さんと混同してない?」
「権田原から来た信子は、あの女ひとり。混同しようもない」
長はあたしのわずかな希望をはっきり否定した。
そっか・・・やっぱりそっか。そうなんだ。
うーん・・・それは・・・・・・。
お岩さんもあたしも、ひどく暗い顔をして考え込んでしまった。
うぅ、まずい。それは非常にまずい。
だって産婆さんの正体が因業ババだなんて。
お岩さんにとっての、たったひとつの頼みの綱があたし達の敵だよ敵!
その相手にどうやって救いを求めりゃいいの?
そもそも、聞いて素直にあのババ教えてくれるのか?
ああもう! なんだってこんな次々と目の前に、でっかい壁がドーンと立ちはだかって・・・!
・・・・・・いや、待てよ?
あたしはともかくとして、お岩さんとババは昔馴染みなわけだから。
『きゃー、懐かしいですわぁ! お姉さぁん、私のこと覚えてるー!?』
とかなんとか、バカなふりして明るく近づいていけないかな?
で、昔話で盛り上げて、さり気なーく会話を誘導していくとか・・・。